ニコ生リスナーたちが合議制でプロ棋士に挑むというニコ生ユーザーイベント、「ニコニコ超将棋会議」(6月22日開催)を取材してきました。

リスナーたちのコメントを集計して次の指し手を決めるシステムを使い、集団の知恵でプロ棋士と対戦。コンピュータ将棋VSプロ棋士の「電王戦」と似たところもありますが、コチラは人間(プロ棋士)と人間(集団合議制)の戦い。

なお主催者のえびふらいさんは、コンピュータ将棋プログラム『大合神クジラちゃん』の作者でもあります。

ユーザー企画ながら、内容は本気そのもの。

対戦相手は、棋聖戦で中原誠、森内俊之(当時名人)らを破りベスト8入りしたこともある西尾明六段(順位戦:C級2組、竜王戦:2組)。

読み上げ・記録は、中村桃子女流初段。

さらに対局場所は、将棋の聖地・将棋会館の特別対局室。プロ棋戦でも特に重要な対局でしか使われない、まさに「特別」な一室。

もちろんリスナー全員が将棋会館に詰めかけたわけではなく、特別対局室では西尾先生と代理の指し手(奨励会の方だそうです)が対峙。実際に対局するリスナーたちは全国津々浦々のPCの前。そして将棋会館内の別室で、スタッフたちが放送の中継やコメントの集計、指し手の伝達などを行うという体制でした。

アマチュアがいくら集まっても船頭多くして~となりアッサリ敗北するんじゃ? と危ぶんでいましたが……結果はいかに!?

将棋会館の一室にスタッフルームが設けられ、放送の中継その他が行われました。

生放送でリスナーたちと相談し合いながら投票を集計し、対局を進める企画主・えびふらいさん。リスナー集団の司会・進行役といった役どころ。

こちらは現場カメラ映像の中継。

リスナー側にもかなりの上級者がいるようで、中盤までは互角~リスナー優位に見える展開(ハイレベルすぎて具体的なことはわかりませんでした。すみません)。実際の対局は特別対局室&日本全国のリスナー宅で行われたとはいえ、スタッフルームの空気も熱戦に緊迫していきます。

対局は朝10時からスタートし、お昼休みを挟んで夕方まで。お昼休みで外出した西尾先生がすぐに戻ってきて、残り時間を検討にあてたという話からも、ガチンコの勝負になったことが伝わってきます。オヤツとして差し入れられたチョコレートも、まったく手を付けられていませんでした。プロ棋士として素人には負けられない! そんな気迫が伝わってきます。

終盤に差し掛かったところで、リスナー側が西尾先生に対し「詰めろ」(相手が対処を誤れば詰みが確定する局面)をかけていきます。スタッフルームにも、「これは勝てるのでは? 勝ってしまうのでは!?」というムードに。

そしてそのままリスナー押せ押せの展開が続くも、さすがプロ棋士。すべていなしていきました。

そしてしばらくするとリスナー側の攻め手が尽き、「投了」にかなりの投票が集まるように……。この時点でほぼリスナー敗北は確定していたようで、合議内容も「いつ投了するか」に移っていきます。

もっと続けたい! みっともなくても詰まされるまで戦いたい! という意見が強かったようで、そのまま何手か打ち続けました。

そして最後は、合議の結果投了となり、主催者のえびふらいさんが席を立ち……。

特別対局室に移動。西尾先生に投了を告げ、プロ棋士VS素人集団の一戦は終局となったのでした。

10時からスタートし、投了時刻は16時35分ごろ。昼休憩をはさんだとはいえ、6時間半以上の戦いでした。

特別対局室でもエンディング映像が流され、西尾先生とともに鑑賞。

その後は感想戦に移ります。対局の流れを再現しつつ、お互いの指し手を検証。西尾先生によると、リスナー側の勝機もあったとのことです(ハイレベルすぎて具体的なことはわかりませんでした。すみません)。

感想戦後、長時間の正座により、立ち上がれなくなったえびふらいさん……。

リスナー側敗北というある意味順当な結果に終わったものの、「集団で話し合いながら進めれば、プロ棋士とも勝負になる」ということが証明されました。

このシステムならば、そこまで棋力が高くない人でも、雲の上の存在たるプロ棋士と矛を交えられるわけです。この1戦だけで終わらせるにはあまりにもったいない、非常に面白く可能性に満ちたシステム。

今後の動きにも、要注目です。